コラム : 特許事務所の選び方〜自分に適した特許事務所とは

(1)良い特許事務所とは…?

苦労して完成させたご自分の発明を特許にしたいとお考えの方は、やはり信頼のできる特許事務所に依頼したいとお考えのことと思います。

最近は、特許事務所も自分のホームページを持つところも多く、その事務所の特徴を知ることができるようになりました。

しかし、自分の事務所のホームページである以上、自己の事務所のPRの一環であることは否定できません。と、書いているこのコラムも、私の特許事務所のホームページの一サイトであるので、私が良い事務所の要件を挙げても、やはりある意味私の事務所のPRになってしまうでしょう。一方で、よい特許事務所の条件については、いまさら私が挙げなくても既に色々なサイトで提案されているところでもあります。

ここでは、特許事務所以外のところが提案している条件として「コラム:特許事務所の探し方」でも挙げさせていただいた、パテントビューロー社の記載を引用して紹介させていただこうと思います。

パテントビューロー社の特許ナビでは特許事務所の正しい選び方として下記の4点を指摘しています。

(詳しくは「特許ナビ」のコンテンツ一覧で「文章形式で学ぶ特許」の「超低価格事務所」の欄をご覧ください。)

  1. 質の高い明細書を作成できるかどうか
  2. 先行技術調査をきちんとしてくれる事務所かどうか
  3. あなたが出願しようとしている特許の技術分野が得意な事務所かどうか
  4. 自分に必要なサービスを行っている事務所かどうか

(2)これら条件の確認の仕方

上に挙げられた1〜4は、確かにナルホドと思える条件です。このうち「2」の「先行技術調査」については特に重要なので、後日別途コラムとして書く予定です。「2」の要件については先行技術調査の料金表などの掲載である程度判断できます。(注:a)

また、「4」については依頼される方のお考えで色々あると思いますので、ご依頼される際にご確認ください。細かいサービス(例えば、出張依頼、土日休日対応など)については、大手の事務所よりも個人経営の事務所のほうが柔軟に対応してくれることが多いようです。

(3)「公報テキスト検索」の活用

残った「1」「3」の条件はどのように検討したらよいでしょうか?

その一つの方法として「特許電子図書館(通称:IPDL)」が提供する「公報テキスト検索」を活用することができます。

コラム「特許事務所の探し方」で、お近くの特許事務所をいくつかピックアップしたら、「公開テキスト検索」の「検査項目選択」で「代理人」という項目を選び、検索キーワードでその事務所の弁理士さんの名前を入れると、その弁理士さんが扱った特許出願がヒットします。(注:b)

一覧では発明の名称が表れるので、これを見るだけでもその弁理士さんがご自分の発明の技術内容と近い技術を扱っているかがある程度分かります。さらにご自分の技術に近い内容の「特開20XX-XXXXXX」などの番号をクリックすると、どのような内容で出願されたのかもわかります。

もし件数が1000件を超えて表示できない場合は、「検査項目選択」の「公報発行日」の項目で例えば「20090101:」などど入力し、その弁理士さんの最近の動向(例では2009年1月1日以降)に限定して調べればよいでしょう。特許の明細書の内容は難解であることが多いですが、ご自分の技術内容に近い内容であれば意外と分かることが多いですので、とっつきにくさを我慢して読まれてみたらいかがでしょうか?明細書の質もある程度判断できると思います。

(4)中小企業向けの特許事務所

特許事務所は、大手企業を主にクライアントとするところと、中小企業を主にクライアントとするところがあります。これも「公報テキスト検索」である程度分かります。特許出願の詳細で【出願人】の欄を見ると、その弁理士さんに依頼した企業(または個人)の名称(またはお名前)が分かります。ここの欄がほとんどが大手企業(特に1社〜数社)の場合、その事務所さんは主に大手企業をクライアントとしています。一方、この欄にあまりなじみのない企業の名前が多く記載されていたら、その事務所は中小企業を主にクライアントとする特許事務所であると判断できます。

(5)所感

最後に私の考えるポイントを1つ加えるとすれば、担当する弁理士さんとの相性だと思います。実際に弁理士さんと会われてみて、ご自分の発明を説明された時に、色々話しやすい弁理士さんだと、発明をいろんな角度から検討でき、発明の気付かなかった特徴を引き出してくれるなど、特許を取るという面でも有利に働くことが多いです。

またその発明が特許になった場合や、さらに改良発明について特許を取りたいとお考えになった場合など、一度依頼された特許事務所と、そのあと長い付き合いになることが多いので、やはり相性というのは大切だと思います。

その弁理士さんがご自分と相性がよいかどうかは、実際に会って確かめるのが一番です。いくつか特許事務所をピックアップされたら、まず特許出願の依頼ありきではなく、発明の相談として特許事務所をお尋ねになるとよいでしょう。(注:c)

相談料は無料のところもありますし、有料としても、通常一時間あたり五千円程度、高くても一万円程度です。また実際に特許出願依頼を行うと、お支払いになった相談料は、出願手数料の前払い金として充当されることが多いです。

なお大手事務所の場合は、その所長さんとの相性だけでなく、実際の担当者との相性が大切になってきますので、発明相談の席で、担当予定も弁理士さんも同席してもらうようにするととよいでしょう。

本コラムへのご質問や、当事務所を特許出願の依頼候補としてお選び頂いた際にはこちらのお問い合わせまで

注釈)

a)  先行文献調査を調査会社に依頼し、事務所費用を上乗せして提供している事務所もあるようですので、料金項目、内容詳細を提示してもらうとよいでしょう。

b)  複数弁理士が所属している場合の所長さんなどはその事務所の扱う全ての案件に代理人として名前を連ねているので、必ずしもその人が直接行った仕事ではない場合があります。また業務法人となっている特許事務所の場合、個人の名前ではなく、その法人名が代理人となっている場合があります。

c)   特許事務所で相談された場合、その事務所で出願しないと発明が知られてしまうと心配される方がいらっしゃいますが、弁理士は相談された内容に業務上の守秘義務を負っていますで、弁理士に相談されている限りご安心ください。

(2009年8月15日公開)